23回演奏会


☆ビクトリア  ミサ「輝かしきはその御国」 

トマス・ルイス・デ・ビクトリア(1548頃~1611)は、いわゆる「黄金世紀」におけるスペイン宗教楽派最後の巨匠で、世俗曲はひとつも残していません。ローマに渡ってパレストリーナに師事し、そのままローマで活躍していましたが、1585年頃に帰国してからの後半生は、ほぼスペイン国内で活躍しました。ローマ楽派のポリフォニー技法の中に、スペイン的な激しい情念を表出した独特の作風を持っています。

この当時、よく知られた旋律あるいは自作のモテット等の旋律を基にしてミサ曲の各楽章に統一感を与える「パロディ・ミサ」という手法が一般的となり、テーマの旋律をポリフォリックな動きの随所にちりばめた多くのパロディ・ミサが書かれましたが、本日演奏するミサ曲もそのひとつで、1572年出版のモテット集にある「輝かしきはその御国 O quam gloriosum est」という自作のモテットを素材に作曲されています。

1583年にローマで出版された「ミサ曲集」に含まれ、スペイン王フェリペ2世に献呈されたこのミサ曲は、彼の作った20のミサ曲の中で最も有名な曲のひとつと言われており、パロディによる各パートの立ち上がりの旋律が特徴的なばかりでなく、ラテン語式文の抑揚に合わせた無理のない旋律と、ポリフォニックな動きの中で生まれる響き豊かな和声、そして全体を貫くしっとりとした情感が、知・情・意を兼ね備えた作曲者の確かな腕前を感じさせる、素晴らしい作品となっています。  (TI) 

☆クビツェク  3つのモテット 

アウグスティン・クビツェクは、1918年にオーストリアのウィーンで生まれた作曲家・合唱指揮者。リンツのブルックナー音楽院とウィーン音楽アカデミーで学んだ後、ウィーン高等音楽院で音楽理論・作曲を教授するかたわら、合唱曲のほか室内楽・管弦楽曲などを作っています。

「3つのモテット」(作品22d)は1960年代前半に書かれ1966年に出版されたもので、クリスマスの礼拝式文から作曲者が選んだラテン語の歌詞によっており、今回採り上げる混声合唱版よりも女声合唱版の方が、よく演奏されているようです。

言葉の抑揚に従い、ときにグレゴリオ聖歌風の旋法的な動きを見せる旋律、ホモフォニックな部分と交代するポリフォニー的な旋律模倣の流れ等ともあいまって、3曲ともに特徴的なのは、その独自の和音感で、不協和音を効果的に使用しつつ、気分の沈潜あるいは劇的な盛り上がりを巧みに表現しています。           (TI)

 

☆松下耕  混声合唱とピアノのための「信じる」 

この組曲は谷川俊太郎の詩による全4曲で構成されています。まず、終曲「信じる」が、2004年度NHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲として、混声(女声)3部合唱曲で作曲されました。詩の強いメッセージと、感情移入しやすいメロディが多くの中学生の共感を呼び、今では校内合唱コンクールの定番曲として親しまれています。

2006年に組曲として初演されるにあたり、「信じる」は混声4部合唱に編曲され、「ふるさとの星」「くり返す」「泣けばいい」の3曲が新たに作曲されました。

◆ふるさとの星

私たちのふるさとである地球は雄大で、その大いなる包容力で私たちは守られています。しかし私たちはついつい地球の大切さを忘れがちではないでしょうか。

◆くり返す

この曲は、私たちに2つとない命の大切さを、直接的な表現で訴えかけてきます。人の命はリセットできません。くり返すことはできないのです。

◆泣けばいい

困難にぶつかりどうしようもなく落ち込んでしまうときがあります。そんなとき「泣く」ことによって乗り越えられることがあります。涙を流すことは決して後ろ向きの行為ではなく、むしろ私たちを前へ押し進めてくれこともあるのです。

◆信じる

今自分がこうして生きているのは、自分を信じてくれる人たちがいてくれたからこそなのです。また、自分が信じるものがあったからこそなのです。「信じることに理由はいらない」。全てはここから始まるような気がします。(KT) 

☆東京混声合唱団愛唱曲集 

“懐かしい曲”、“親しみやすい曲”を、作曲家・ピアニストとして活躍する若林千春氏の編曲でお届け致します。

若林氏は長野県生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科及び同大学院作曲課程修了。1995年日本音楽コンクール作曲部門(管弦楽作品)第一位及び安田賞を受賞。また、2000年東京文化会館舞台芸術作品募集最優秀賞を受賞。これまでに5回の「若林千春 個展」を開催。作曲活動はもとより、在学中より現在に至るまで、多くの音楽家や団体と共演活動をしています。

本日演奏する曲のうち、「上を向いて歩こう」から「世界の約束」までの6曲は、東京混声合唱団が学校公演を行なう際のレパートリーとして編曲されました。また、「粉雪」は第73NHK全国学校音楽コンクール全国大会・高等学校の部 スペシャルステージのために編曲・初演されました。

若林氏の、作曲家の目を通した細やかで卓越したアレンジは、原曲の良さを保ちつつも、音楽的な質の高さと、ときに“作曲”とも思えるほど拡げられた音の世界を感じさせます。それらは若林氏の世界観を重ねたものであるとともに、歌う者、聴く者に様々なかたちで働きかけてきます。これらの曲を楽しんで頂くとともに、自らの内にあるものに音の世界を重ね、目の前や心のうちに拡がるものを感じて頂ければ、と思います。

◆上を向いて歩こう

 永六輔・中村八大のコンビが生んだ昭和の名曲のひとつ。1961年に坂本九が歌い、国民的人気を博しました。また、アメリカでは「SUKIYAKI」のタイトルでレコード化され、日本のうたとして広く知られています。日米で親しまれたこの曲を、軽快なスイングが橋渡ししています。

◆となりのトトロ

1988年上映の宮崎アニメ「となりのトトロ」の主題歌。当団では、演奏会のアンコールで度々取り上げ、お客様の中には“おなじみ”という方もいらっしゃるでしょう。会場のあちこちに姿を現すトトロたちを、みなさんでさがしてみましょう。

◆島唄

 THE BOOM1992年沖縄限定でウチナーグチ(沖縄言葉)ヴァージョンを発売し大ヒット。その後、1993年にオリジナルヴァージョンがシングル発売されました。今では国境を越え、数多くのカヴァーヴァージョンが存在します。波や風の音、三線の調べといった南国情緒に、悲しい歴史に散ったものたちへの鎮魂や平和への祈りさえ重なり、やがてすべてが静けさの中に溶けていきます。

◆翼をください

グループ“赤い鳥”が1971年シングル「竹田の子守唄」のカップリングとしてリリース。学校の授業で歌ったという方も多いと思います。作詞の山上氏が、自らの病弱だった幼少期に抱いたという憧れと希望を、シンプルなアレンジでまっすぐに高らかに歌います。 

◆いつも何度でも

2001年上映の宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」の主題歌。穏やかな旋律と、次第にふくらむ響きの中に込められたもの・・・ それは、どんな時も、何があっても、輝くものは自分のすぐそばに、自らのなかにある、という確かなメッセージ。

「世界の約束」  2004年上映の宮崎アニメ「ハウルの動く城」の主題歌。劇中では倍賞千恵子さんが歌っています。ピアノ・コンチェルトを思わせる劇的な中間部を経て、曲は様々な思いや時を重ねていくように、深く穏やかな響きに満たされていきます。

「粉雪」  ロックバンド“レミオロメン”の2005年のヒット曲。すれちがう2人の心を切なく歌い上げたこの曲は、若者を中心に多くの支持を集めました。舞い散る粉雪を模した前奏や、各パートが紡ぐ澄んだハーモニーは、冬の冷たい空気のようにメロディを包みます。また、サビの部分での大胆な展開は、オリジナルにない新しい世界へ私達を誘います。                                         (KS)